【レポート】リフォーム産業フェア2026で見えた、住宅・リフォーム業界の次の役割
(一社)日本人の健康をつくる住宅断熱リフォーム推進協議会
事務局長 コマツアキラ
2026年7月29日、東京ビッグサイトで開催された「リフォーム産業フェア2026」のメインステージにて、「Airdogの家」コンセプトモデルの発表ならびに「断熱の次は、“空気”の時代へ」をテーマとしたトークセッションが行われました。
当協議会からは、代表理事の岩前篤が登壇。私は事務局長として、セッションの進行を務めました。登壇者・ファシリテーターは、以下のとおりです。
岩前 篤(当協議会 代表理事/ウムヴェルト建築総合研究所 主宰/近畿大学 元副学長・建築学部教授)
柗浦 好紀 氏(株式会社エアドッグジャパン 代表取締役)
北村 重光 氏(株式会社エアドッグジャパン 代表取締役)
三木 孝行 氏(株式会社エスエーエス 代表取締役)
ファシリテーター:コマツアキラ(当協議会 事務局長)
トークセッションだけでなく、会場内の「Airdogの家」ブースにも多くの方が訪れていました。来場者の様子からも、断熱に加えて、住まいの空気環境への関心が高まっていることを実感しました。
断熱リフォームによって、日本人の健康をつくる。そのために、私たち住宅・リフォーム業界は、断熱を土台として、どこまで住環境を考えるべきなのでしょうか。今回のトークセッションを通じて見えてきた住宅と健康の新たな可能性をお伝えします。
断熱リフォームで、日本人の健康をつくる
日本人の健康をつくる住宅断熱リフォーム推進協議会(以下、健断リフォーム推進協議会)は、適切な断熱リフォームが人の健康につながることを啓発し、より良い住環境のための調査研究を進めるとともに、正しい知識と施工技術を建築業界へ広めることを目的としています。
私たちが目指しているのは、単なる省エネルギー対策としての断熱ではありません。住まいの温熱環境を整え、そこに暮らす人の健康寿命を延ばすための断熱です。高度な断熱性能を備えた住宅を日本全国に広げるため、業界の垣根を越えて学び合い、最新の情報と技術を共有することも、協議会の大切な役割です。
健康市場に、住宅業界はどう応えるか
2030年には30兆円を超えるとも言われる健康産業の市場に、医療、食品、運動、美容など、多くの産業が参入しています。私たち住宅業界にも、「断熱」という技術を通じて、生活者の健康ニーズに応える力があります。
ただし、住宅が人の健康に与える影響は、室温だけではありません。断熱によって快適な温熱環境をつくることを土台に、湿度や換気、空気の質まで含めて住環境を考える必要があります。今回のセッションで焦点となったのも、私たちが毎日、無意識のうちに取り込んでいる「空気」でした。

三木代表が示したのは、人が一日に体内へ取り込む空気の量です。その量は約15,000リットル。食べ物や水より圧倒的に多いにもかかわらず、空気は目に見えないため、その質を意識する機会は多くありません。温度だけでなく、どのような空気の中で暮らすか。それも、住宅業界が提供できる健康価値の一つです。

人が一日に取り込む空気は約15,000リットル
こうした空気への関心を、住宅全体の価値へ発展させようとしているのが「Airdogの家」です。柗浦代表は、Airdogの利用者から、設置した部屋だけでなく「家の中全体の空気をきれいにしたい」「外から取り込む空気そのものをきれいにしたい」という声が寄せられていたことを、プロジェクトを立ち上げた背景として挙げました。
断熱を健康につなげるために、「空気」まで考える
岩前先生からは、日本の住宅がシックハウス対策、断熱、気密、換気へと進化してきた経緯が示されました。

大切なのは、「これまでの技術が足りなかった」という話ではありません。断熱と気密を高めたからこそ、湿度、カビ、換気フィルターの管理、室内CO₂濃度など、次に解くべき課題がはっきり見えるようになったということです。
断熱が健康を守る基盤であることに変わりはありません。しかし、断熱を施せば、それだけで健康な住環境が完成するわけでもありません。断熱・気密を土台に、換気、空気清浄、湿度管理を連携させ、実際の暮らしの中で機能させる必要があります。
「断熱の次は空気」というより、断熱を人の健康につなげるために、空気まで一体で考えること。それが、これからの住環境づくりには求められます。
正しい知識と施工技術を、選ばれる価値へ
三木代表の話で印象に残ったのは、「Airdogの家」を誰にでも供給するのではない、という方針でした。調湿を含む設備を安全に機能させるには、断熱・気密・換気を正しく設計し、確実に施工できる建築技術が必要です。エスエーエスでは、住宅会社の技術力を確認したうえで、必要に応じて施工や断熱計算を支援し、技術と販売の両面から伴走していく考えが示されました。

製品を導入して終わりにするのではなく、その性能を十分に引き出せる設計・施工まで支える。この姿勢は、正しい知識と施工技術を建築業界に浸透させようとする健断リフォーム推進協議会の活動にも通じるものです。
断熱リフォームも、単に断熱材を加えればよいわけではありません。建物の状態を診断し、その家と暮らし方に合った設計と施工を行う必要があります。こうした技術力が生活者にも分かる形で示されれば、真面目に技術を磨いてきた会社が選ばれる新たな基準にもなり得ます。
既存住宅を知るリフォーム業界だからできること
「Airdogの家」は開発中の住宅設備ですが、セッションで示された課題は、リフォーム業界とも無関係ではありません。既存住宅では、換気設備の設置から長い年月が経っていたり、フィルターの場所や手入れの方法が住まい手に伝わっていなかったりします。断熱改修を行う際には、温度だけでなく、気密、換気、湿度、結露まで一体で考えることが、これまで以上に重要になります。
新築では、建物と設備を最初から一体で計画できます。一方、既存住宅は、築年数や断熱・気密の状態、既存設備、家族の暮らし方が一軒ごとに異なります。それらを読み取り、今ある住まいを健康な環境へ変えていく。それは、既存住宅をよく知るリフォーム会社だからこそ担える仕事です。
「いいものは高い」を、どう越えるか
私がセッションであえて投げかけたのが、価格の問題です。断熱改修や新しい設備が、健康につながる優れた技術であっても、「高いから売れない」で終われば、生活者に届かず、社会にも広がりません。
北村代表は、Airdogを販売し始めた当初も「そんなに高い空気清浄機は売れない」と言われたと振り返りました。

それでも、空気への意識が変わるなかで、「Airdogだから欲しい」「Airdogなら安心」と指名されるブランドになった。ここに、住宅業界が学べる大きなヒントがあります。
予算の壁を越えるには、断熱性能や設備の数値を示すだけでは足りません。その技術によって、自分や家族の暮らしがどう変わるのか。なぜその価格を払う価値があるのか。私たちは、住宅と健康のつながりを、生活者の言葉に置き換えて伝える必要があります。

「これが欲しい」という感情が、予算の壁を越える
業界の垣根を越え、健康寿命を延ばす住まいへ
柗浦代表は、「Airdogの家」を各地域で展開するには、地域ごとの気候や住宅事情に合わせたカスタマイズが必要との考えを示しました。

そのため、プロジェクトの趣旨に賛同した株式会社マスターズ、株式会社アイムホーム、株式会社サンプロの住宅会社3社と連携し、各社の実験モデルハウスで稼働・検証を進めます。
実際の住宅にシステムを導入し、建物との適合性や地域に応じた調整方法を確かめながら、2027年度中の商品化を目指す計画です。地域によって気候や住宅のつくり方が異なるからこそ、建築会社と設備会社が現場で検証を重ね、仕組みを一緒につくり上げていく過程が欠かせません。
私たちが目指すべきなのは、個別の商品や設備の普及だけではありません。建築、設備、研究、行政、メディアなどの異なる分野が連携し、断熱、気密、換気、空気清浄、調湿を生活者の健康につなげることです。
超高齢化社会を迎える日本で、住まいは人の健康寿命を延ばすための大きな解になり得ます。健断リフォーム推進協議会としても、断熱と健康のつながりを伝えるだけでなく、その先にあるより良い住環境を求め、正しい知識と技術を学び、広めていきたいと考えています。
